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2019年6月22日土曜日

認知症と思考実験、介護疲れ予防に

認知症と思考実験



認知症患者と上手に接したい、優しい気持ちで見守っていたい。
容易いことではないです。
私自身、憤りを感じた事が何度もあります。
少しでも、そんな方の助けになればと思い今回
このようなテーマを設け記事にしてみました。
思考実験というフィルターを通して
客観的に認知症を理解できればと考え記述しています。


実際の事例より

実際にあった事例を紹介します。

Aさん(専業主婦)は、認知症の母親Bさんを介護しています。
そんな、ある日の出来事。
いつもはリビングで過ごす母親の姿がありません。
Aさんは不安になり、家中の部屋を急いで探しました。
どこにも見当たらず、最後にトイレを開けると―、
そこに母親の姿を見つけます。
ホッとしたと同時に、AさんはBさんに向かい怒鳴りました。
この時Aさんは、
中腰で便器に手を突っ込む母親を見たのです。
しかも、その手にはお椀が……

これは、Aさんの介護を切り取ったひと場面です。
今回の騒動は、はじめてのケースでした。
しかし度々
似たような出来事を目の当たりにしていて
Aさんは最近、介護疲れを感じています。

さて、Aさんと母親が直前に
どのように過ごしていたのかを見ていきます。

Bさんとの会話は、多少の食い違いはあるものの
この時も一緒に昼食をとりながら二人で過ごしていました。
食事が終わり、空いた皿を重ねると
Aさんは疲れからか、そのまま
テーブルに突っ伏して眠ってしまいました。
ハッと目をさましたときに、母親の姿はありませんでした。

直前の行動を知って、何か感じとれましたか?
もしかしたら、Bさんが何をしていたのか
理解できた方もいるかもしれません。


思考実験から考察してみる

ここで、ある思考実験を紹介します。
今回の状況を客観的、冷静に
理解することができればと思います。

便器のクモ
トマス・ネーゲルという哲学者の
実体験だそうです。

ある時、学校の便器にクモが巣を作っていた。
ネーゲルはそれを可哀想に思い、
便器の外に出してやった。
次に見たとき、クモは床で死んでいた。
それに、清掃員が来るまで何日も放置された。

この思考実験で問題とされているのが、
相手の不幸、幸福は自分の物差しでは測れない
ということ。
「便器のクモ」の場合、
クモはどう感じていたのか
がキーポイントです。
ネーゲルは、便器から助けたつもりでも
クモにとっては
便器こそが最高の住処だったかもしれません。

相手の気持ちは図り知れないということです。
常日ごろ、相手の立場にたってみると
意外な側面が見えてくることがあります。


思考実験を通して事例を考察する

これを踏まえて、先程の話に戻りましょう。
認知症のBさんは、
便器に手を突っ込んでいました。
普通なら、汚い場所だと知っているので
頼まれたってそんな事しません。
ではなぜ、Bさんはそこに手を入れたのか。

Bさんには、ある目的があったのだと
気付けるはずです。
その答えは、
茶碗を洗いたかったから。
ただし、Bさんは
何処で茶碗を洗うべきか
という考え方において
記憶が一部欠落しています。なので、
知っている記憶から答えを導き出したのです。

食後、茶碗が汚れているから洗いたかった。
ただ、何処で洗うべきか
覚えていなかったんです。
もしかしたら、疲れた顔で眠る娘を見て
食器を洗ってあげよう
気遣っての行動だったのかもしれません。

便器はとても低い位置にありますよね?
良かれと思い
狭い部屋で、かがんで一生懸命茶碗を洗う
そこへAさんがやってきて、突然
怒鳴られたとしたら?

ここまでが、1つの実例を
思考実験を用いて考察した内容です。
健常者と認知症患者、気持ちのすれ違いから
関係性が悪くなることがよくあります。
ただ、認知症を理解することは
とても難しく根気のいる作業です。
ただ、少し心のゆとりをもって接する事で
なぜだろう?と一歩あゆみ寄ることができます。
AさんとBさんの関係は改善し、
介護の負担がぐっと下がるかもしれません。
豆知識程度にでも、
頭の隅に置いておいていただければと思います。

じつは、この話には続きがあります。

Aさんはふと、
眠りから覚めた時のことを思い出します。
飛び起きた時、布が足元に落ちたんです。
それは、母親のBさんが
先ほどまで身に着けていた
黄色のカーディガンでした。

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